商品を探す

時代を超えて愛されるナイフブランドになるまで

1890年にフランス・サヴォワ地方の職人ジョセフ・オピネルによって生み出された折りたたみナイフは、やがてフランスの人々の暮らしに深く根づき、
今では世界中で愛されています。そのシンプルで美しいデザインと機能性は、何世代にもわたりオピネル一族に受け継がれ、時代の変化とともに発展してきました。
130年以上続くOPINELの歩みを、いまここで紐解いてみましょう。

オピネルの軌跡を辿る
01
1800
1800

原点はジュヴダスの
鍛冶工房から

行商人としてフランス各地を旅していたヴィクトル=アメデ・オピネルは、旅のなかで釘の鍛造技術を学びました。その知識と経験を活かし、サン=ジャン=ド=モーリエンヌ近郊のアルビエ=ル=ヴィユー村、ジュヴダスという小さな集落に鍛造工房を構えます。
アメデの死後は、共に働いていた息子ダニエル・オピネルがその工房を受け継ぎ、鍛冶職人としての道を歩みました。彼はやがて、鉈や鎌などの農具を求める農民たちから高い信頼を集める職人として名をあげるようになります。

02
1872
1872

創立者ジョセフ・オピネルの誕生

ジョセフ・オピネルは、鍛冶職人ダニエル・オピネルの長男として、アルビエ=ル=ヴィユー村のジュヴダスで生まれました。
ジョセフには二人の弟ジャンとアルベール、そして三人の妹マリー、アルフォンシーヌ、シルヴィがおり、にぎやかな家族に囲まれて育ちました。

03
1890
1890

オピネルナイフの誕生

18歳になったジョセフは、家業である鍛冶工房で父ダニエルと共に働いていましたが、彼の関心は伝統的な手仕事よりも、最新の機械や技術に向けられていました。自作のカメラを手に地元の行事や結婚式でカメラマンとして活躍するなど、多才な一面を見せていきます。そんな最新技術を駆使した「ものづくり」への情熱と探究心に導かれたジョセフは、機械化を快く思っていなかった父ダニエルの想いに反して、仕事の合間を縫っては、ポケットナイフの開発に没頭。そんな試行錯誤の末、ついにオピネルナイフが誕生したのです。

04
1897
1897

用途にあわせたサイズ展開

ジョセフは、手の大きさや使い方に応じた、多様なサイズのナイフが必要だと考え、No.01からNo.12までの12サイズを開発。最も小さなNo.01には懐中時計のチェーンに取り付けられるリングが付いていました。しかし、No.01とNo.11は需要の減少により1935年に製造を中止。現在では、最小サイズがNo.2(刃渡り3.5cm)、最大サイズはNo.12(刃渡り12cm)となっています。
1970年代にはプロモーションの一環として、店頭ディスプレイ用の巨大なオピネルナイフも制作されました。これを見た人々の関心は高まり、小売店からの注文が殺到。この“特大サイズ”のNo.13は、刃渡り22cm、全長はなんと50cmにも及ぶものでした。

05
1901
1901

はじめての工場の建設

商業的な成功を収めたジョセフは、増え続ける生産需要に応えるため、父の鍛冶工房近くのポン=ド=ジュヴダスに、新たに工場を建設しました。大量生産を実現化するため、木製ハンドルをより効率的に製造できる機械も独自に開発。
さらに、水力タービンを利用して、村で初めて電気を引き入れることに成功しました。電気は工場だけでなく、自宅、そして工場へと続く小道にまで通されました。ある日、その明かりを見た村の老婦人が、驚きのあまりこう尋ねたといいます。「どうやって電線に油を流し込んだのかしら?」ジョセフのものづくりへの探究心は、道具だけにとどまらず、地域の暮らしや風景までをも変えていったのです。

06
1909
1909

「王冠を戴く手」の刻印

ジョセフは、ナイフに特別な刻印を施すことを決めました。それが、今なお変わらず、すべてのOPINEL製品に刻まれている「王冠を戴く手」のモチーフです。このモチーフの由来は、16世紀まで遡ります。
1565年、フランス国王シャルル9世は、刃物の品質を証明するための紋章を刻むよう、鍛冶職人たちに命じました。この伝統に倣って、ジョセフが選んだのは「祝福の手」でした。「祝福の手」はオピネル一族の故郷であるサン=ジャン=ド=モーリエンヌの紋章に描かれていた、聖ヨハネの手を象ったものです。
さらに、ジョセフはサヴォワがかつて公国であったことを想起させるために、王冠を付け加えました。

07
1911
1911

「アルパイン国際博覧会」金賞受賞

1911年、ジョセフは、イタリア・トリノで開催された「アルパイン国際博覧会」に参加しました。彼が用意したのは、木彫の額の大きなショーケース。
そこには、12サイズ展開のポケットナイフ「オピネル・サヴォワ」をはじめ、キッチンナイフやテーブルナイフ、かみそり、はさみ、剪定ナイフ、さらには栓抜きまで、多彩な製品がずらりと並び、博覧会を大いに盛り上げました。その洗練されたデザインと、実用性に富んだラインナップに、審査員たちは大いに感銘を受け、ジョセフに栄えある金メダルが授与されることとなったのです。
この時使用された木彫のショーケースは、現在もオピネル本社に展示され、その賞状も資料室に大切に保管されています。

08
1915
1915

シャンベリーへの工場移転

ジョセフは、これまでの場所では事業の発展に限界があると感じていました。戦争のさなか、彼はOPINELのさらなる成長を見据えて自ら各地を巡り、新たな製造拠点を探します。
やがて彼は、シャンベリー郊外のコニャンにある皮なめし工場を発見しました。建物は老朽化していたものの、シャンベリー駅に近接し、大きな鉄道や道路網の中心に位置するという立地の良さに可能性を見出し、迷うことなく買う決断をしました。工場の移転にあたって、ジュヴダスからサン=ジャン=ド=モーリエンヌまではラバや牛を使い、そこからシャンベリーまでは列車での移動となりました。数ヶ月にわたる改装期間を経て、1917年、ジョセフは息子のマルセルとレオンと共に、OPINELの新たな挑戦に乗り出します。

09
1926
1926

工場の火災

当時からOPINELの工場では、ハンドルの成形時に出る木屑を暖房用の燃料として活用してきました。この仕組みは現在も引き継がれており、木屑を再利用したボイラーにより、年間約20万リットルの燃料を節約しています。
1926年1月、消火が不十分だった薪ストーブが火元となり、工場全体が焼失する火災が発生しました。オピネル一族はこの災害を乗り越えて、同じ敷地内に新たな工場を建設し、事業を継続しました。

10
1927
1927

新工場の再建

火災から数か月後には、近代的な工場が建設され、マルセルの長男モーリスが洗礼を受けたのと同じ日に、落成式が行われました。この工場はその後閉鎖されましたが、2014年まで工場内で唯一稼働していた口金製造の工房は、現在はシャンベリーの工場へと移転されました。

11
1950
1950

継承と発展

マルセルの長男モーリス・オピネルが事業に加わりました。当時23歳だったモーリスは、マーケティングや管理を担当していた叔父レオンのもとで数年間にわたり経験を積みました。一方、父であるマルセルは、創業者ジョセフ・オピネルと同様に機械技術への関心が高かったこともあり、工場運営と生産部門を担当。当時、50名を超える従業員が工場で働いていました。

12
1955
1955

ビロブロック®の発明

当初のオピネルナイフは、刃、固定口金、リベット、ハンドルの4つの部品で構成されていました。固定口金は、刃をハンドルにリベットで確実に固定するためのものでした。1955年、ナイフの安全性向上に取り組んでいたマルセルは、シンプルで画期的なロック機構「ビロブロック®」を発明しました。回転する口金を固定口金の上でスライドさせて溝を塞ぐことで、刃を開いた状態で安全にロックできるようにしたのです。
シンプルな仕組みながら、実用化に至るまでは試行錯誤の連続でした。1990年代には、刃を閉じた状態でもロックできるよう改良が加えられ、一部モデルで採用。2000年には、折りたたみナイフのほぼすべての製品に搭載されるようになりました。

13
1960
1960

ジョセフ・オピネルの死

1月29日は、オピネル一族にとって忌まわしい日です。1926年のこの日、コニャンの工場が火災に見舞われました。そして1960年1月29日には、OPINELの創業者であるジョセフ・オピネルが88歳で逝去。彼は、生涯をものづくりと会社の発展に捧げました。さらに、30年後の1990年同日には、息子マルセル・オピネルが亡くなったのです。

14
1973
1973

大規模生産拠点を
ルヴェリアーズに新設

1970年代初頭、OPINELの事業拡大が続くなかで、シャンベリー郊外コニャンの工場は手狭になりました。これを受け、コニャンから数キロ離れたルヴェリアーズの工業団地に、より大規模で近代的な生産拠点を新たに建設することが決定。新工場は当初、木工、組み立て、梱包を担う施設として稼働を開始しましたが、2003年からは全工程を担う中心拠点となり、本社もこの地に移されました。

15
1985
1985

『世界の美品100特選』に選出

1985年、ヴィクトリア&アルバート美術館が選定する『世界の美品100特選』に、ポルシェ911やロレックスと並んで、OPINELの折りたたみナイフが選出されました。一世紀以上もの時を超えて愛される、シンプルで普遍的なデザインと実用性は、多方面から高く評価され、その功績が讃えられています。

16
1989
1989

『ラ・ルース百科事典』に掲載

フランスの文化遺産であるOPINELは、多くの出版物にその名が引用されています。フランスの辞典『ラ・ルース百科事典』には、登録商標「OPINEL」がBIC、Frigidaire、Solexなどと並んで記載され、次のように定義されています。「ナイフを閉じたときに刃が挿入される溝がある木製ハンドルを特徴とする折りたたみナイフ」。

17
1998
1998

オピネル一族の歴史は続く

父モーリス・オピネルの後を継ぎ、息子のドゥニ・オピネルが社長に就任しました。OPINEL社は、2025年現在も、オピネル一族によって経営が続けられています。

18
2000
2000

ビロブロック®をすべての折りたたみナイフに搭載

1955年にマルセルが発明したビロブロック®は、1990年代に刃を閉じた状態でもロックできるように改良されました。2000年には、折りたたみナイフのすべてのモデルに搭載され、使用時だけでなく持ち運ぶ際にも刃を安全にロックできるようになりました。

19
2003
2003

ルヴェリアーズを
新たな拠点に

生産性の向上と事業活動の一体化を目指して、2003年に本社をコニャンからルヴェリアーズへ移転。既存の工場に隣接して、新たな本社社屋が建設されました。シャンベリーのアンリ・ボルドー通り508番地に位置するこの拠点は、総面積5,000㎡を有しています。

20
2006
2006

時代を代表する
プロダクトとして認定

世界的なアートブック専門出版社Phaidonが手がける「Phaidon Design Classics」において、17世紀以降の時代を代表するプロダクトデザイン999点のひとつとして、オピネルナイフが選出・掲載されました。時代を超えて評価される、その普遍的な美しさと機能性が認められたものです。

21
2006
2006

料理界からの再評価

OPINELは、ピーラー、波刃付きパーリングナイフ、パーリングナイフ、ベジタブルナイフで構成される「エッセンシャルズ・コレクション」を発表。この実用性とデザイン性が評価され、料理業界から再び注目を集めました。

22
2010
2010

「料理本のアカデミー賞」受賞

サヴォワのフランス統合150周年を記念し、OPINELは料理本『La cuisine à l'Opinel(Cooking with Opinel)』を出版。ミシュラン星付きシェフ25人によるレシピや、サヴォワの美食文化に関する考察、美しい写真で構成されています。本書は「料理本のアカデミー賞」とも称される『グルマン世界料理本大賞2009』にて、フランスで最も優れた本部門の第1位を獲得しました。

23
2012
2012

ハンドルに新素材を採用

OPINELはこの年、ハンドルにポリマー樹脂を使用した新しいモデルを発売しました。ポリマー樹脂は水や高温への耐性に優れ、軽量ながら高い強度を備えた素材です。

24
2013

OPINELミュージアムの開設

1989年、ジャック・オピネルは、鍛冶職人だった祖父ジャン(ジョセフ・オピネルの弟)の工房を改装し、OPINELミュージアムを開設。サン=ジャン=ド=モーリエンヌに位置するこの施設は、無料で一般公開されており、OPINELの歴史や製造工程の変遷などを紹介しています。今ではサヴォワの人気観光地のひとつとなりました。

25
2014
2014

一族の歴史が書籍に

2014年にはオピネル一族の歴史をまとめた書籍が出版されました。著者は元ミシュランガイド・ディレクターで、現在は作家として活動するジャン=フランソワ・メスプレード。160ページにわたって、一族の軌跡や従業員のコメントを紹介するとともに、料理人ポール・ボキューズやミシェル・デジョワによる寄稿文も掲載されています。美しい写真の数々は、ティエリ―・ヴァリエによって撮影されました。

26
2016
2016

海外支店
OPINEL USAの設立

2016年春、OPINEL初の海外支店「OPINEL USA」がシカゴに設立されました。アメリカ市場におけるマーケティングと開発を統括しています。

27
2017
2017

初の直営店をオープン

2017年7月、OPINEL初の公式直営店が、オート=サヴォワ地方アヌシー旧市街の中心部にオープンしました。

28
2019
2019

「Les Forgés 1890」
コレクションを発表

キッチンナイフのハイエンド・コレクション「Les Forgés 1890」を発表しました。刃は丸棒鋼から鍛造されたフルタング構造で、ハンドルには伝統的な折りたたみナイフを想起させるブナ材を採用しています。

29
2020
2020

創立130周年を迎えて

OPINELが130年にわたってブランドを守り続けられたのは、創業者ジョセフから息子のマルセルとレオン、孫のモーリス、曾孫のドゥニとフランソワ、そして数多くの従業員や協力者の支えがあったからこそです。
今もなお、創業の地サヴォワに拠点を構え、歴史と伝統を大切にしながら発展を続けていることは、OPINELの大きな誇りです。これからも初心を忘れず、産業設備や製品の研究開発、新たな市場開拓に努め、鋭い切れ味でOPINELの未来を切り拓いていきます。

PAGE TOP